今回ご紹介する漫画は『かんかん橋を渡って』です。結婚して川向うの街に嫁いだ萌。夫の実家で暮らすことになった彼女には、不二子という姑がいました。
美人で気立てがいいと不二子に理想の母親像を見る萌でしたが、不二子には“川東いちのおこんじょう(意地悪)”と呼ばれる裏の顔があったのです。
そのことを近所の人間から聞いた萌は「不二子に限ってそんな」と否定しますが、ある夜、姑が自分を陥れようとする現場を目撃してしまいます。
それまで目を逸らしてきた姑の悪意に触れた瞬間から、萌は自分の置かれた立場を理解していきます。
嫁と姑。これまでも数多くの漫画で題材にされてきたテーマですが、この『かんかん橋を渡って』は家庭内戦争に留まらず、ストーリーが進むと街全体を巻き込んだ戦いに発展していきます。


目次
かんかん橋を渡ってのあらすじ
川を挟んだ別世界に嫁いだ萌
かんかん橋と呼ばれる橋を渡って、川南から対岸の川東に嫁いできた萌。
嫁の務めを果たそうと必死に家事をする萌でしたが、どうしてもご飯が美味しく炊けない悩みを抱えていました。

同じ炊飯器を使っていても不二子が炊くと家族好みの炊き加減になるのに、自分は川東の水に合ってないんだろうかと首をかしげる萌。
義姉の初子からは「お母さんに任せたら」と小言を言われる始末。そんな食卓でのいざこざを仲裁してくれるのが不二子です。

夫の優しさは不二子譲りのものなんだなと嬉しくなる萌でしたが、その後もご飯を美味しく炊くことはできません。
萌を悩ませるのは家庭内の人間関係だけではありませんでした。外で近所の人とすれ違った際も、こちらから挨拶しているのに返してくれず、粘っこい視線を向けられるのです。
新興住宅地の川南に対して、昔からの住人が多く伝統や家柄にうるさい土地の川東に溶け込めていないと感じます。

ある日の晩のこと、萌は不二子に呼ばれそっと耳打ちされます。
「萌さん、あなたは人と話す時よく“川東の”とか頭に付けるけど、ああいう物言いはみっともないからやめた方がいいわ。誰に教わったのか知らないけど、安っぽいおべんちゃらみたいで、いかにも底の浅い人間に見られてしまうわよ」

それは萌がこの家に嫁いで川東の人間になると決めたとき、実家の母親から言われたアドバイスでした。川東の人たちを立てなさい、川南の萌に言われたら悪い気はしないはずだからと。
自分だけでなく母親の人間性まで否定された気がして萌は落ち込みます。
姑は街一番の意地悪で有名だった
そんな萌に優しい言葉を掛けてくれたのは糀屋のおばさん。
萌が「川東の人は」と褒めてくれるのが嬉しかった、若いのに人の気持ちが分かる子だね、いいお母さんに育てられたのねと言われ泣いてしまいます。
泣き出した萌を心配する糀屋のおばさん。彼女は不二子を「おこんじょう」と呼び、それもただのおこんじょうではなく、この街では「川東いちのおこんじょう」で有名だと萌が知らない姑の裏の顔を教えてくれました。

住人からの粘っこい視線の正体が「おこんじょうの家に嫁いできた嫁」に向けられるものだったと気づいた萌。それでも彼女は身内のことを悪く言われたくないと反発してしまいます。
言葉遣いを注意されたことに落ち込みはしたが、それは義母が善意でしてくれたことなのだから、嫌な気分になっても他人のせいにしてはならないと心を奮い立たせました。
しかし家族が寝静まった夜、萌ははじめて不二子の悪事を目撃してしまいます。
トイレに行こうと廊下に出た萌は、暗い廊下を音も立てず歩く不二子の背中を見つけます。何をしているんだろうとついていくと、彼女は萌がセットした炊飯器にタオルを入れ水分を抜き取っていたのです。

それは「空気が乾燥すると風邪を引きやすくなるから」と、不二子が吊るしていたタオルでした。
さすがお義母さん気が利くなと感心していた萌ですが、まさかそれが自分を陥れるための罠だとは気づいていませんでした。この夜までは。
翌朝の食卓に出たご飯は水不足によりパサパサ。当然ですね。タオルが絞れるくらいの量の水を抜かれたんですから。
萌は糀屋のおばさんが言っていたことを思い出し、不二子に恐ろしいものを感じ始めます。
かんかん橋を渡ってを無料で読む方法をご紹介!
『かんかん橋』を渡っては、無料漫画アプリ「マンガBANG!」で読むことができます。
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かんかん橋を渡ってを読んでみた感想
伏線と小道具の使い方が巧み
キャリア抱負な漫画家さんだけあり、1話のなかに伏線を張って小道具を効果的に使いながら、最後の驚きを表現する手腕が巧みです。
『かんかん橋をわたって』第1話は35ページなんですが、そのなかにいくつか同じアイテムが反復して出てきます。
不二子が萌を陥れるために使ったタオルは8ページで初登場します。
暗闇でタオルに触れた萌が大騒ぎして家族を起こしてしまい、義姉から「川南育ちはがさつね!」と白い目で見られるシーンです。

この時点では物音ひとつ立てず歩く不二子との対比、川南の人間と川東の人間の違いを強調する小道具ですが、再登場したときはもう少し悪意を感じる使い方がされています。
糀屋で柚餅子を見た萌が久しぶりに自分でも作ってみた夜です。軒先で干していた柚餅子は室内に取り込まれ、その横に濡れタオルが吊るされていました。

霜にあたったら良くない気がして取り込んだと話す不二子。
お礼を言いながらも濡れタオルの湿気が気になる萌。萌の柚餅子は湿気にあてられたためかカビが生えてしまいました。
そして3度目の登場が炊飯器から水を抜くシーン。
同じ小道具を3度使いながら姑の悪意と裏の顔を徐々に見せていく演出、伏線の張り方に感心します。
よくある嫁姑漫画と思ったら終盤はバトル漫画に!
数年前にTwitterで『かんかん橋をわたって』がバズったことあります。具体的に言うと第1話と第59話の比較が大量にリツイートされました。
そのときどういう紹介のされ方をしたかというと、「嫁姑漫画だと思って読んでいたら、終盤はバトル漫画になる」というものでした。
話題になったシーンがこちら。


なぜこうなったかは実際に読んでいただきたいんですけど、作者の草野誼さんは物語をエスカレートさせていく作り方をする人で、ほかの作品でも中盤からインフレしていく作り込みをしています。
人間の美醜と幸せの関係を突き詰めた『愚者の皮』や、幼いころ母親に虐待された傷跡のせいで周囲からイジメられていた女が、謎の老婆からもらった7億円で復讐してく『ブスが7億円もらったら〜リベンジ〜』など。
人によってはエグすぎて目を背けたくなる部分もあるでしょうが、ハマると癖になります。
かんかん橋を渡ってと合わせて読みたい
ブスが7億円もらったら〜リベンジ〜

上でも少し紹介ましたが同じ作者の漫画です。幼少期に母親からアイロンを顔に当てられ火傷痕が残った入間ゆき。
そのことが負い目となって人と積極的に関わることができず、職場では同僚から疎まれ、信頼していた上司にも裏切られボロボロです。
そんな彼女に近づく怪しい老婆がひとり。ゆきに復讐資金として7億円ポンと預けた彼女の狙いとは?
親子の情と復讐ストーリーを絡めながら主人公の成長が描かれます。
嫁姑の拳

嫁は多くの格闘技を経験したマーシャルアーツの達人。姑は合気道の師範。そんな嫁姑が口論だけではなく実際に拳を交わし、てんやわんやの日常を送るコメディです。
互いに喧嘩しながらも相手を認めるところでは認めており、泥棒が家に入ったときは抜群のコンビネーションで撃退するなど、実は仲良しなのではと思わせる場面が多々あり。
現実にはあり得ない設定ですが、だからこそ漫画映えしますね。
最後に
今回は『かんかん橋をわたって』を紹介してきました。
嫁姑問題を扱った家庭内の話と思わせて、徐々に戦場を街全体に広げながら、古い家が並ぶ川東だから起こる因縁や過去の争いを絡め、最後は愛と友情の物語に昇華していきます。
不二子が萌をイジメるのも、そうしなければならない思惑があるからですが、その思惑とはなんなのか。不二子は萌をどうしたいのか。
続きが気になる作品で一気に読んでしまいました。
